fc2ブログ
探偵小説三昧

日々,探偵小説を読みまくり、その感想を書き散らかすブログ


村上春樹『海辺のカフカ(下)』(新潮社)

 暑い。暑すぎます。梅雨に入ったからといって、ここまで律儀に蒸し暑くならなくてもよさそうなものだが、なんなんだ、この暑さは。私は勤め人とはいうものの、けっこうヤクザな業界なので割合ラフな格好で通勤できるからよいが、スーツを着て街中を歩いているサラリーマンはさぞ辛いことだろう。

 村上春樹は好きな作家の一人だが、実は最近の作品はことごとくダメである。いまだに個人的最高傑作は『世界の終わりとハードボイルドワンダーランド』&『羊をめぐる冒険』だったりするので、それ以後はどちらかといえば物足りなさばかりが残る。特に『ねじまき鳥クロニクル』は痛かった。

 それはともかく久々の村上春樹である。
 結論から言うと、まずまず。ああ、なんという煮え切らない感想だ。
 今作は主人公が十五歳の少年ということや、超自然的要素を盛り込んでいるらしことなどを聞いていたので、いつもよりは創作としての部分が強調されていると思っていたが、ふたを開けてみれば結局いつもどおりの村上春樹であった。

 例えば、登場人物は一見多彩だが、彼らの考えていることや話すことは、すべて村上春樹のいつもの主人公たちと大差ない。典型的な肉体労働者であるホシノさんや売春婦、少々おつむの弱いナカタさんですらそう。みな村上春樹と同じような思考回路を持ち、似たような言葉で話す。思考や指向や志向はすべて作者である村上春樹自身のもので、ハルキワールドの中ですべてが進行し、完結するのである。せめてもの救いは十五歳の少年が「やれやれ」と言わなかったことくらいか(笑)。

 しかしなあ。初めて彼の作品に接する若い読者はいざ知らず、デビュー作から読んできている人間(けっこうな数がいると思うが)には、少々食傷気味である。それが悪いというわけではないが、もう少し新たな感動を期待したいというのは贅沢な要求なのだろうか。
 語り口は相変わらず気持ち良いだけに、もう少し作家として冒険してほしい。それが許される人だと思うのだが。

関連記事

Comments

« »

02 2024
SUN MON TUE WED THU FRI SAT
- - - - 1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 - -
プロフィール

sugata

Author:sugata
ミステリならなんでも好物。特に翻訳ミステリと国内外問わずクラシック全般。
四半世紀勤めていた書籍・WEB等の制作会社を辞め、2021年よりフリーランスの編集者&ライターとしてぼちぼち活動中。

ツリーカテゴリー