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グレアム・グリーン『情事の終り』(早川書房)
仕事が緩やかに忙しくなっていく。徐々に体も頭も重くなる。こういう感覚は久しぶりだ。私の仕事の場合、だいたい一気に忙しくなるのが普通なのだが、仕事の性質がここ一年でだいぶ変わってしまったため、最近は磨り減る感じで疲れていくことが多い。なんだか嫌な疲れ方ではあるな。あんまり鬱にならないよう気をつけねば。
そんなわけで読書もあまり派手で疲れそうなのは避け、本日はグレアム・グリーンの『情事の終り』を読む。
グリーンの分身ともいえる主人公の作家の不倫物語。お得意の冒険小説的、サスペンス小説的なアプローチではなく、静かな私小説といった趣。『ことの終わり』というタイトルで映画にもなっている有名な作品である。
とまあ、こんな紹介をすると軽い内容に思えるかもしれないが、実はグリーン自身の宗教観や人生観が色濃く反映された極めて重厚な小説である。表面的には恋愛を扱うが、ちょっと読み進めただけで、これがただの恋愛ではなく、人間愛や神への愛を描いていることに気づく。特に終盤、ヒロインであるサラの死後はボルテージがいっそう高まり、主要な三人の男の生き方や考え方が交差して、愛の本質を探ってゆく。
正直、わかりにくい小説ではある。難解というよりは、ピンとこない、といった方が適切か。頭ではなんとか理解できるものの、やはりしっかりした宗教観なり信仰をもっていないと、本書に触れたとは言い難い。こういう恋愛論になると、ある意味死生観を語るより難しいのではないだろうか。
だからといって敬遠するにはあまりにもったいないのも確か。中盤までの展開はエンターテインメント以上に面白いし、描写も唸るほど巧い。特に脇役として登場する探偵とその息子の使い方などは、さすがグリーン。エピソードそのものが面白い上に主人公との対比としても効果を上げている。
普段、恋愛小説なんて、と仰る人も、一度だまされたと思って読んでみるのが吉かと。
そんなわけで読書もあまり派手で疲れそうなのは避け、本日はグレアム・グリーンの『情事の終り』を読む。
グリーンの分身ともいえる主人公の作家の不倫物語。お得意の冒険小説的、サスペンス小説的なアプローチではなく、静かな私小説といった趣。『ことの終わり』というタイトルで映画にもなっている有名な作品である。
とまあ、こんな紹介をすると軽い内容に思えるかもしれないが、実はグリーン自身の宗教観や人生観が色濃く反映された極めて重厚な小説である。表面的には恋愛を扱うが、ちょっと読み進めただけで、これがただの恋愛ではなく、人間愛や神への愛を描いていることに気づく。特に終盤、ヒロインであるサラの死後はボルテージがいっそう高まり、主要な三人の男の生き方や考え方が交差して、愛の本質を探ってゆく。
正直、わかりにくい小説ではある。難解というよりは、ピンとこない、といった方が適切か。頭ではなんとか理解できるものの、やはりしっかりした宗教観なり信仰をもっていないと、本書に触れたとは言い難い。こういう恋愛論になると、ある意味死生観を語るより難しいのではないだろうか。
だからといって敬遠するにはあまりにもったいないのも確か。中盤までの展開はエンターテインメント以上に面白いし、描写も唸るほど巧い。特に脇役として登場する探偵とその息子の使い方などは、さすがグリーン。エピソードそのものが面白い上に主人公との対比としても効果を上げている。
普段、恋愛小説なんて、と仰る人も、一度だまされたと思って読んでみるのが吉かと。
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