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 今回はネタバレになっていますので未読の方はご注意。






 本書をひと言で言ってしまうと、吸血鬼テーマのホラー&叙述ミステリである。身も蓋もない書き方だが、実際そのとおりで、この二つの事実を知らずに読むのと知っていて読むのでは、だいぶ読後感が違うはずだ。もちろん知らずに読む方が、はるかに楽しめること請け合いである。

 そもそも手記という形式が曲者で、著者のスタージョンはそれを必然とばかりに利用し、読者を迷宮に誘い込む。この物語は事実なのか? 語り手は誰なのか? そして周到に張り巡らされた伏線の数々。
 それは形を変えた「読者への挑戦」。本書は一応ホラーに属する物語ではあるが、ミステリとしても一級品と言ってよいだろう。

 もちろん本筋たるホラーとしての側面もまた見事である。手記の形をとった文体はどちらかといえば淡々とした筆致だ。そのなかで主人公たる青年の心理や行動がじわじわと浸透し、読み手に奇妙な不安感を抱かせる。ものすごく怖い、ということはないが、この居心地の悪さがなんとも気色よい。吸血鬼テーマということもあって、フロイト的な解釈が幅をきかすが、それもまた著者の綿密な計算どおり。そう、本書はホラーであると同時にミステリでもあるが、青春小説あるいは恋愛小説でもあるのだ。

 とまあ、けっこう褒め倒してしまったが、それほど派手な展開があるわけでもなく、作りそのものはいたって地味目。だが村上春樹がいう「小確幸」は間違いなく与えてくれる、そんな作品である。あまりに過剰な期待はせず、読了後、いい作品に出会えた幸せをそっと噛みしめるのがよいかと(笑)。


テーマ:推理小説・ミステリー - ジャンル:本・雑誌




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