- Date: Thu 10 04 2003
- Category: 海外作家 バークリー(アントニイ)
- Community: テーマ "推理小説・ミステリー" ジャンル "本・雑誌"
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アントニイ・バークリー『ウィッチフォード毒殺事件』(晶文社)
本日の読了本はアントニイ・バークリーの『ウィッチフォード毒殺事件』。デビュー作の『レイトン・コートの謎』に続く第二作目であり、よりこなれた印象を受けるだけでなく、バークリーの目指す方向性がより鮮明となった作品である。
目下の世間の話題はロンドン郊外ウィッチフォードで起こった妻の夫殺し。自宅で砒素中毒によって死亡したジョン・ベントリーだが、その数日前に夫人が砒素入りの蝿取り紙を購入した事実や、所持品から大量の砒素が発見されていたこと、最近の夫人の不倫問題などによって、警察は夫人を殺人容疑で逮捕する。
その都合良すぎるほどの状況に注目したのが、推理作家にしてアマチュア探偵のロジャー・シェリンガム。友人のグリアスンをワトソン役に、颯爽と現場に乗り込んでゆく。
結論からいこう。これも『レイトン・コートの謎』に勝るとも劣らない出来映え。大傑作とは言わないが、十分に本格探偵小説の醍醐味を堪能できるおすすめの一冊である。
そのロジックとユーモアを融合させたスタイルは、すれたマニアからミステリ初心者まで楽しめ、一読すれば本書が決して歴史的価値、古典としての価値だけではないことがわかる。
また、忘れてならないのは、オーソドックスな本格の形を借りつつも、ミステリの新たな在り方を模索していることにある。それはデビュー作からのバークリーの姿勢であり、本書はもちろん、以後も試行錯誤が続くことになる。それらのすべてが成功しているのかどうか、全作を読んでいないので断言はできないが、少なくとも今、邦訳で読めるものは間違いなく結果を残している。このアベレージの高さは尋常ではない。間違いなくバークリーはクリスティーやクイーン、カーといった大御所に匹敵するだけの実力を備え、ミステリに貢献した作家である。
まあ、あまり難しく考える必要もない。二転三転するストーリーやシェリンガムの推理や捜査活動などは、何の予備知識がなくとも素直に楽しむことができる。バークリーの目指すところは高くとも、おそらく彼が生来持っているサービス精神が独りよがりになることを許さないのだ。これが凡百の作家とバークリーの違いでもある。
とにかくミステリが好きだと自負するなら、バークリーはとりあえず読むべし。決めつけるのは気がすすまないが、ミステリを語る上では絶対に外せない作家である。そう信ずる。
目下の世間の話題はロンドン郊外ウィッチフォードで起こった妻の夫殺し。自宅で砒素中毒によって死亡したジョン・ベントリーだが、その数日前に夫人が砒素入りの蝿取り紙を購入した事実や、所持品から大量の砒素が発見されていたこと、最近の夫人の不倫問題などによって、警察は夫人を殺人容疑で逮捕する。
その都合良すぎるほどの状況に注目したのが、推理作家にしてアマチュア探偵のロジャー・シェリンガム。友人のグリアスンをワトソン役に、颯爽と現場に乗り込んでゆく。
結論からいこう。これも『レイトン・コートの謎』に勝るとも劣らない出来映え。大傑作とは言わないが、十分に本格探偵小説の醍醐味を堪能できるおすすめの一冊である。
そのロジックとユーモアを融合させたスタイルは、すれたマニアからミステリ初心者まで楽しめ、一読すれば本書が決して歴史的価値、古典としての価値だけではないことがわかる。
また、忘れてならないのは、オーソドックスな本格の形を借りつつも、ミステリの新たな在り方を模索していることにある。それはデビュー作からのバークリーの姿勢であり、本書はもちろん、以後も試行錯誤が続くことになる。それらのすべてが成功しているのかどうか、全作を読んでいないので断言はできないが、少なくとも今、邦訳で読めるものは間違いなく結果を残している。このアベレージの高さは尋常ではない。間違いなくバークリーはクリスティーやクイーン、カーといった大御所に匹敵するだけの実力を備え、ミステリに貢献した作家である。
まあ、あまり難しく考える必要もない。二転三転するストーリーやシェリンガムの推理や捜査活動などは、何の予備知識がなくとも素直に楽しむことができる。バークリーの目指すところは高くとも、おそらく彼が生来持っているサービス精神が独りよがりになることを許さないのだ。これが凡百の作家とバークリーの違いでもある。
とにかくミステリが好きだと自負するなら、バークリーはとりあえず読むべし。決めつけるのは気がすすまないが、ミステリを語る上では絶対に外せない作家である。そう信ずる。
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