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ロナルド・A・ノックス『サイロの死体』(国書刊行会)
人気があるんだかないんだか、いまひとつわからないロナルド・A・ノックス。名のみ有名な『陸橋殺人事件』を初めて読んだのは、創元推理文庫での刊行がきっかけだった。だが悲しいかな、当時はそれが本格探偵小説のパロディ(解説の真田氏によればユーモア小説)ということにまったく気がつかず、けっこう真面目に読んだがために、その仕掛けや魅力を堪能できたとはとても言い難かった。
それから長い年月を経て、私もそれなりにミステリの経験値を上げてきた(つもり)。そこへ久々のノックスである。
インディスクライバブル社委託の保険調査員マイルズ・ブリードン。彼はラーストベリに住むハリフォード夫妻のハウスパーティーに招待された。そしてその夜、カーレースを模した「駆け落ちゲーム」が催されるが、その翌朝、ただ1人ゲームに参加しなかった招待客がサイロのなかで死んでいるのが発見される。死亡推定時刻は駆け落ちゲームの真っ最中。自殺、事故、それとも……?
『陸橋殺人事件』の例もあるので、本作ではどういう仕掛けを凝らしてくるのかと思いきや、けっこうガチガチの本格で驚いてしまう。解説によるとこちらの方が主流らしく、やはり『陸橋殺人事件』の方が例外だったようである。
これも解説で指摘しているのでわかったことだが、とにかく伏線や手がかりの張り方がすさまじい。まさに「本格」の名に恥じないプロットを備えた作品で、意外性もある。微に入り細をうがった構成というか、解決もかなり考えられている。
と、一応褒めてはみるものの、それでも退屈してしまうのはなぜか?
それは意外にクセのない登場人物の描き方であったり、中盤の盛り上がり不足のせいもあるだろう。また、本作では「駆け落ちゲーム」という格好のネタを導入部に用いながら、不思議なくらいレースの描写が淡泊なのももったいない。カーあたりがこの題材を料理すれば、かなりハイテンションの物語に仕上げたはずだ。
娯楽としての吸引力がもう少しあれば……、そう思わせずにはいられない作品。そんな気がする。
それから長い年月を経て、私もそれなりにミステリの経験値を上げてきた(つもり)。そこへ久々のノックスである。
インディスクライバブル社委託の保険調査員マイルズ・ブリードン。彼はラーストベリに住むハリフォード夫妻のハウスパーティーに招待された。そしてその夜、カーレースを模した「駆け落ちゲーム」が催されるが、その翌朝、ただ1人ゲームに参加しなかった招待客がサイロのなかで死んでいるのが発見される。死亡推定時刻は駆け落ちゲームの真っ最中。自殺、事故、それとも……?
『陸橋殺人事件』の例もあるので、本作ではどういう仕掛けを凝らしてくるのかと思いきや、けっこうガチガチの本格で驚いてしまう。解説によるとこちらの方が主流らしく、やはり『陸橋殺人事件』の方が例外だったようである。
これも解説で指摘しているのでわかったことだが、とにかく伏線や手がかりの張り方がすさまじい。まさに「本格」の名に恥じないプロットを備えた作品で、意外性もある。微に入り細をうがった構成というか、解決もかなり考えられている。
と、一応褒めてはみるものの、それでも退屈してしまうのはなぜか?
それは意外にクセのない登場人物の描き方であったり、中盤の盛り上がり不足のせいもあるだろう。また、本作では「駆け落ちゲーム」という格好のネタを導入部に用いながら、不思議なくらいレースの描写が淡泊なのももったいない。カーあたりがこの題材を料理すれば、かなりハイテンションの物語に仕上げたはずだ。
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