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探偵小説三昧

日々,探偵小説を読みまくり、その感想を書き散らかすブログ


香山滋『海鰻荘奇談』(講談社大衆文学館)

 本日も香山滋。現代教養文庫版を読み終えたので、手近にあった講談社の大衆文学館シリーズから『海鰻荘奇談』を引っ張り出す。ところが現代教養文庫版とかなりの重複があり、ここ数日で読んだものは飛ばしていったため、アッという間に読み終えてしまう。収録作は以下のとおり。

「オラン・ペンデクの復讐」
「海鰻荘奇談」
「怪異馬霊教」
「白蛾」
「ソロモンの桃」
「蜥蜴の島」
「エル・ドラドオ」
「金鶏」
「月ぞ悪魔」

 管理人はたまたま現代教養文庫版で読んだばかりなのであれだけど、このラインナップは充実の一語。現代教養文庫版からさらに精選したという趣で、むちゃくちゃ粒ぞろいである。重複する作品については、現代教養文庫版の方の感想を見てもらうとして、ここではだぶっていない作品だけ感想をアップしよう。
 「蜥蜴の島」は大トカゲに育てられた女を愛してしまったレスビアンの女性が、彼女を愛するあまりにトカゲと同一化しようとする幻想譚。いったいどうしたらこんな設定と展開を思いつくのか。これだけでも強烈だが、著者はそれを耽美という衣にくるんで提供する。その味わいがまさに絶品。
 「エル・ドラドオ」は探検家、人見十吉のシリーズデビュー作。「毎度毎度事件の渦中にに入り込みすぎるのが個人的に好みではない」と12月13日の日記に書いたが、どうやらデビュー作から既にそのパターンは完成されていたようである。軟体人類の描写がえぐく、気持ち悪いが気持ちよい。
 「金鶏」は「妖蝶記」と同様、人獣交婚を扱った一作。シンプルだが「妖蝶記」ほどの力強さはなく、ややあっさりめ。この一冊のなかでは最も物足りなさが残る。

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sugata

Author:sugata
ミステリならなんでも好物。特に翻訳ミステリと国内外問わずクラシック全般。
四半世紀勤めていた書籍・WEB等の制作会社を辞め、2021年よりフリーランスの編集者&ライターとしてぼちぼち活動中。

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