FC2ブログ
ADMIN TITLE LIST
 ジュリアン・シモンズの『自分を殺した男』を読む。
 レクトレクス電気商会を経営するアーサー・ブランジョンは、家で妻の尻にしかれ、仕事もパッとしない惨めな男。かたや結婚アシスタント社を経営するイースンビー・メロン少佐は、仕事もまずまず順調で、妻からも愛される幸せな毎日を送っている。何から何まで正反対の二人だが、アーサーはとうとう妻を殺そうと決心する。犯人をイースンビー・メロン少佐に仕立てて……。

 一種の倒叙ミステリだが、謎の要素はあまり重要視されず、主人公の犯行前後の心理の移り変わりに主眼が置かれている。著者のシモンズが主張していた犯罪小説論はエンターテインメントとしての虚構を評価しないものであったため、本格派の愛好者からはすこぶる評判が悪かったわけだが、本作はそういう本格擁護派への回答といった趣がある。
 ここが大事なことだが、本書のネタをそのまま本格の謎解き小説に仕上げても、けっこういいレベルの作品ができあがったはずだ。それを倒叙という形でネタを先にばらし、あくまで主人公が転落し、壊れてゆく姿をメインテーマとするところにシモンズの自負があるような気がする(本当にあったかどうかは知らぬが)。実際、本作の主人公の心理や行動の描き方は絶妙であり、ブラックユーモアの効いた優れた犯罪小説に仕上がっている。


テーマ:推理小説・ミステリー - ジャンル:本・雑誌




| HOME |

Design by mi104c.
Copyright © 2019 探偵小説三昧, All rights reserved.