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アントニイ・バークリー『レイトン・コートの謎』(国書刊行会)
ご存じ国書の世界探偵小説全集もついに第4期へ突入したようでめでたしめでたし。本日の読了本は待望のアントニイ・バークリーのデビュー作、加えて迷探偵シェリンガムの初登場作品というのだからファンには堪えられない。
筋書きはそれほど複雑ではない。レイトン・コートと呼ばれる館には主人のスタンワース氏が、秘書や執事とともに住んでいる。スタンワース氏は人付き合いのよい快活な性格でお金持ち。普段から知人や友人などを招いて暮らす毎日だ。
ところがそんなある日のこと、スタンワース氏が書斎で死んでいるのが発見された。死因は頭部への銃創。現場や死体の状況、残された遺書などから、警察は自殺という判断を下す。しかし、招待客の一人、ロジャー・シェリンガムだけは死体の不可解な様子や他の招待客の不審な行動に納得いかず、持ち前の好奇心から友人アレックスをワトスン役に調査を開始するのであった。
本作が発表されたのは1925年だが、本書ではすでにそれまでの本格探偵小説に対する咀嚼がなされ、しかもそれを逆手に取るという技が仕掛けられている。後にアンチミステリというかミステリのパロディ的な作品を多く残すバークリーだが、処女作においてもその萌芽は十分に伺うことができるのはさすがだ。
ただし、探偵小説の型に挑戦するという気負いゆえか、あるいは処女作ゆえの青さからか、真っ正直に探偵小説を語りすぎるのが鼻につくという弱点はある。初めから虚構内の登場人物であることをシェリンガムが認めているようなところも感じられ、本格探偵小説でこれをやられてもな、というのはある。それがまた笑える部分でもあるので、なかなか評価は難しいところだ。まあ、実際の話、そこまで目くじら立てるほどのことでもないのだが。
ともあれトータルでは楽しい一冊である。頭の回転に自信がある好奇心旺盛な作家、加えて名探偵志望という役柄を、シェリンガムが全力で熱演し、モース警部ばりの試行錯誤を繰り広げる様はなんとも可笑しい。
本格としてのキレも十分。ネタがネタなだけに詳しく書けないが、犯人当てはそれほど難しくないと思う。伏線も張りすぎているきらいはあるし。でもそれが作品の質を落としているかというと、決してそんなことはない。一作品としてみた場合、古典に馴染んでいないミステリファンが読んでも十分満足できる出来なのだ。やはりミステリの黄金時代を生き抜いた作家は、底力が違う。
筋書きはそれほど複雑ではない。レイトン・コートと呼ばれる館には主人のスタンワース氏が、秘書や執事とともに住んでいる。スタンワース氏は人付き合いのよい快活な性格でお金持ち。普段から知人や友人などを招いて暮らす毎日だ。
ところがそんなある日のこと、スタンワース氏が書斎で死んでいるのが発見された。死因は頭部への銃創。現場や死体の状況、残された遺書などから、警察は自殺という判断を下す。しかし、招待客の一人、ロジャー・シェリンガムだけは死体の不可解な様子や他の招待客の不審な行動に納得いかず、持ち前の好奇心から友人アレックスをワトスン役に調査を開始するのであった。
本作が発表されたのは1925年だが、本書ではすでにそれまでの本格探偵小説に対する咀嚼がなされ、しかもそれを逆手に取るという技が仕掛けられている。後にアンチミステリというかミステリのパロディ的な作品を多く残すバークリーだが、処女作においてもその萌芽は十分に伺うことができるのはさすがだ。
ただし、探偵小説の型に挑戦するという気負いゆえか、あるいは処女作ゆえの青さからか、真っ正直に探偵小説を語りすぎるのが鼻につくという弱点はある。初めから虚構内の登場人物であることをシェリンガムが認めているようなところも感じられ、本格探偵小説でこれをやられてもな、というのはある。それがまた笑える部分でもあるので、なかなか評価は難しいところだ。まあ、実際の話、そこまで目くじら立てるほどのことでもないのだが。
ともあれトータルでは楽しい一冊である。頭の回転に自信がある好奇心旺盛な作家、加えて名探偵志望という役柄を、シェリンガムが全力で熱演し、モース警部ばりの試行錯誤を繰り広げる様はなんとも可笑しい。
本格としてのキレも十分。ネタがネタなだけに詳しく書けないが、犯人当てはそれほど難しくないと思う。伏線も張りすぎているきらいはあるし。でもそれが作品の質を落としているかというと、決してそんなことはない。一作品としてみた場合、古典に馴染んでいないミステリファンが読んでも十分満足できる出来なのだ。やはりミステリの黄金時代を生き抜いた作家は、底力が違う。
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