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探偵小説三昧

日々,探偵小説を読みまくり、その感想を書き散らかすブログ


スチュアート・ウッズ『不完全な他人』(角川文庫)

 仕事が修羅場モードに突入して、金曜日は徹夜、土曜もそのまま午前様まで仕事となる。その間隙をぬってスチュアート・ウッズの『不完全な他人』を読了。

 ニューヨーク行きの機内でたまたま隣り合わせた二人の男。二人にはどちらも経済的な事情などで妻がジャマな存在になっていた。酒を飲みながら話すうち、機内の映画でヒッチコックの『見知らぬ乗客』が流れる。どちらからともなく二人は妻の交換殺人を持ちかけていた……。

 『不完全な他人』は最近のウッズに顕著な、ベストセラー狙い、映画化狙いの作品。相も変わらずテンポもいいし、語り口も巧い。巻き込まれ型ミステリの主人公にしては珍しく、初めから地位もお金もあって大変優雅な生活が語られるが、それほどイヤミったらしくないのはウッズの筆力の為せる技という感じだ。

 しかし、出だし快調なれども中盤からはご都合主義のオンパレード。ストーリーの核になる部分を強烈な偶然に頼っているのはかなりいただけないし、主人公のやることなすことも上手くいきすぎである。
 しかもいったんは妻殺しを依頼した主人公。のちにそれで後悔することにはなるのだが、これが薄っぺらく感じてしようがない。犯人の行動もいまひとつ説得力に欠けるうえ、攻めもぬるい。これでサイコ・サスペンスと言われてもなぁ。

 本作は最近のウッズのなかでも最低の部類に入ることは間違いない。ほんとにウッズはダメになってしまったのか、ちと心配である。
 ネットで調べると、『警察署長』や『風に乗って』『草の根』などリー一族を主役にしたシリーズの最新作も本国では出版されているらしいので(といってももう2年前らしい)、とにかくそちらを早く読んでみたい。でも翻訳は出るんかいな?

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sugata

Author:sugata
ミステリならなんでも好物。特に翻訳ミステリと国内外問わずクラシック全般。
四半世紀勤めていた書籍・WEB等の制作会社を辞め、2021年よりフリーランスの編集者&ライターとしてぼちぼち活動中。

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