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探偵小説三昧

日々,探偵小説を読みまくり、その感想を書き散らかすブログ


エリザベス・デイリイ『二巻の殺人』(ハヤカワミステリ)

 以前に読んだ『予期せぬ死』が思いがけないほど気に入ってしまったので、かねてから積んであった『二巻の殺人』に手を出す。一般的な評価はこちらの方が上とのことなので、かなり期待して読んだのだが。

 古書鑑定家ガーマジのもとへロビナ・ボールガードという婦人が訪れた。しかし、彼女の依頼は古書鑑定ではなく、ガーマジの素人探偵としての腕を見込んでのものだった。
 ボールガード一族の財産を一手に握る当主インブリー・ボールガールド。ロビナを含め、彼の財産をあてにする親族たちだが、そこへ現れたのがリディア・スミスと名乗る少女だった。実は彼女、百年前にバイロン全集の第二巻とともに失踪した少女で、長い時を経て、再びその本を携えてその姿を現したというのだ。すっかりリディアに夢中になるインブリーだが、親族は何やらきなくさいものを感じ、同時に遺産の行く末を気にかけていた……。

 穏やかで染み通るような語り口は前作同様。構成もきめ細かく、謎解きも説得力十分で、探偵小説を読んだなぁという気にはさせる作品だ。ただ、早川書房の復刊希望アンケートで十位に入ったわりには、それほどの大傑作だとは思えない。確かに謎解きでは「なるほど」という気持ちにはなったが、決して「やられた」という気にはならない。これなら物語としては『予期せぬ死』の方が上ではないか。ちょっと拍子抜け。

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プロフィール

sugata

Author:sugata
ミステリならなんでも好物。特に翻訳ミステリと国内外問わずクラシック全般。
四半世紀勤めていた書籍・WEB等の制作会社を辞め、2021年よりフリーランスの編集者&ライターとしてぼちぼち活動中。

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