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 鮎川哲也氏が亡くなる。また、巨星墜つ、という感じで、今年は非常にミステリ畑の逝去者が多い。なんとも悲しい限りである。
 私が初めて鮎川作品に接したのは角川文庫の『黒いトランク』。当時中学生だった私にはやや退屈な部分もあったが、緻密な構成に本格のお手本を見たような気がし、なにか惹かれるように『ペトロフ事件』や『黒い白鳥』、『憎悪の化石』といったあたりを次々と読んでいった。最近ではすっかり離れてしまっていたが、河出文庫の初期傑作選も買ってあるし、相変わらず過去の名作も復刊されているようなので、また、ぼちぼち読んでみることにしよう。

 読了本はアンドリュー・クラヴァンの『愛しのクレメンタイン』。新しく刊行された叢書、創元コンテンポラリの一冊。
 どうでもいいが創元って新しい叢書を作りすぎではないか(それをいったら早川もそうか)。版型からテーマに至るまで完全に変えてくれるとそれなりによいのだが、結局みんな文庫で、カバーで統一感を出すだけだからどうにも小手先な印象しか受けない。創元ノヴェルズの二の舞にならなければよいが、と老婆心。

 さて、肝心の内容だが、もうビックリ仰天(死語)である。なんせミステリでもなんでもないどころか、女性を主人公にした性の遍歴(これまた死語ですか)なのだ。とてもじゃないが、あのジョン・ウェルズ・シリーズを書いた作家のものとは思えないが、まさにそのシリーズを書いている真っ直中に書かれた作品なのだ。創元コンテンポラリという叢書だから予測できないこともないのだが、それにしても……。
 ストーリーはあってないようなものだ。サマンサ・クレメンタインという詩人の女性が、検事補の夫や精神科医、命の電話にかけてくるGODらとの会話を通じて、自己の生涯や性、思想、哲学などを語るという仕掛け。自由奔放だが繊細な彼女の生き様は、どこか納得できないものをはらみつつ何故か共感もできるという不思議な印象を残す。リー・タロックの『イン・アンド・アウト』やテリィ・サザーンの『キャンディ』を読んだときの読後感と似ているかも。
 しかしながら、アンドリュー・クラヴァンのもうひとつの指向性がわかったという意味では面白いが、個人的には今さらこういう小説を読む気は起こらない。語り口はうまいので読んでいる間はいいのだけど。


テーマ:推理小説・ミステリー - ジャンル:本・雑誌




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