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探偵小説三昧

天気がいいから今日は探偵小説でも読もうーーある中年編集者が日々探偵小説を読みまくり、その感想を書き散らかすページ。

 

久山秀子『久山秀子探偵小説選II』(論創ミステリ叢書)

 仕事がプチ修羅場。まあ、これぐらいは大したことではないが、デスクワークが多くて腰にきてしまった。背筋や膝もかなり不調。おそらくは座っているときの姿勢のせいなのだが、少し考えないとなぁ。

 『久山秀子探偵小説選II』を読む。女スリ「隼お秀」のシリーズで知られる久山秀子だが、『久山秀子探偵小説選I』と合わせれば、すべての「隼お秀」を読めるばかりか、ほぼ全集としての体裁になるのだという。
 で、こちらの収録作だが以下のとおり。最初の五編が「隼お秀」もので、「盗まれた首飾」「当世内助読本」「或る成功者の告白」の三編はノン・シリーズ。以下は捕物帖、エッセイという構成。

◆創作編
「女優の失踪」
「ボーナス狂譟曲」
「当世やくざ渡世」
「白旗重三郎が凄がった話」
「隼銃後の巻」
「盗まれた首飾」
「当世内助読本」
「或る成功者の告白」
「梅由兵衛捕物噺/ゆきうさぎ」
「梅由兵衛捕物噺/恩讎畜生道」
「梅由兵衛捕物噺/由兵衛黒星」
「梅由兵衛捕物噺/恐妻家御中」
「梅由兵衛捕物噺/心中片割月」
「梅由兵衛捕物噺/新版鸚鵡石」
「梅由兵衛捕物噺/相馬の檜山」

◆随筆編
「愚談」「丹那盆地の断層」「探偵作家と殺人」
「処女作の思ひ出」「当世百戦術」「マイクロフォン」「アンケート」

 「隼お秀」とノン・シリーズの全体的な印象は相変わらず。語り口の軽味を生かした小咄的なものがほとんどで、一作一作をあまりどうこういうものではないように思う。『久山秀子探偵小説選I』で初めてまとめ読みしたときにはまだそれなりに新鮮だったが、やはり飽きやすい作風であることは間違いない。この独自の作風、世界観は評価できるものの、当時、どの程度の人気を集めたのか、どの程度評価されていたのか、なかなか気になるところではある。
 「梅由兵衛捕物噺」は、著者が正体も明かして戦後に発表した捕物帖。作品によって人情物と謎解きものの振れ幅があるが、期待を裏切るほどではない。というか、キャラクターの面白さを除けば「隼お秀」より上かも。こういうものが書けたのなら、「隼お秀」ももう少ししっかり書き込めばよかったのに。惜しいなぁ。

 なお、この『久山秀子探偵小説選』だが、本書の解説を読むかぎりでは二冊でほぼ全集ということだったのに、現時点で実は四冊まで刊行されている。未収録作品がまだまだ残っていた、ということなのかな?

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プロフィール

sugata

Author:sugata
ミステリならなんでも好物。特に翻訳ミステリと国内外問わずクラシック全般。
四半世紀勤めていた書籍・WEB等の制作会社を辞め、2021年よりフリーランスの編集者&ライターとしてぼちぼち活動中。

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