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エドマンド・クリスピン『永久の別れのために』(新樹社)
本日の読了本は、エドマンド・クリスピン『永久の別れのために』。
正直言って、管理人のなかではいまひとつクリスピンの持つ作品イメージが希薄である。『消えた玩具屋』『お楽しみの埋葬』『愛は血を流して横たわる』『金蝿』あたりは一応読んではいるが(『白鳥の歌』は長らく積読)、どうにも印象が薄い。悪いのではなく“薄い”のだ。クリスピンの作風と言えば、ユーモアを前面に押し出したスラップスティック風な展開とか、ときに見せるペダンティックな味付けとかだと思うのだが、いままでに読んだ作品名を見ても「そんな感じだったっけ?」という感想しか出てこない。困ったもんだ。
『永久の別れのために』はこんな話だ。
とある村へやってきたダチェリー氏は、村に中傷の手紙が横行していることを知る。被害は拡がり続け、ついには自殺者まで出してしまうが、さらにその数日後、手紙の送り主を調査していた男性教師が死体で発見される。村に移り住んできた女性医師ヘレンが容疑者として目されるのだが……。
「中傷の手紙」テーマというのは英国ミステリの一ジャンルといえるぐらい度々使われるらしい。なぜに「中傷の手紙」が英国作家に人気があるかは知らぬが、その陰湿なイメージと相まって、今回の作風もいつもの明るい雰囲気とはうって変わり、やや暗めである。晩年の作品だけに、作者の体験や心情が反映されている感じも受ける。ただし、個人的にはもっと暗いのが好きなんだが。
本格ミステリとしては伏線なども丁寧で、最後の謎解きシーンはさすがに魅せる。ネタ的には驚くほどのものではないが、クリスピンが真面目に書いているのが感じられるし、(詳しく書くとネタバレになるが)ちょっとしたご愛敬があるのも本書の魅力だろう。
ただし、客観的にみて「どうしても読まなければ」という作品ではないだろう。オーソドックスな英国ミステリが好きな人、クリスピンのファンなら、といったところか。
正直言って、管理人のなかではいまひとつクリスピンの持つ作品イメージが希薄である。『消えた玩具屋』『お楽しみの埋葬』『愛は血を流して横たわる』『金蝿』あたりは一応読んではいるが(『白鳥の歌』は長らく積読)、どうにも印象が薄い。悪いのではなく“薄い”のだ。クリスピンの作風と言えば、ユーモアを前面に押し出したスラップスティック風な展開とか、ときに見せるペダンティックな味付けとかだと思うのだが、いままでに読んだ作品名を見ても「そんな感じだったっけ?」という感想しか出てこない。困ったもんだ。
『永久の別れのために』はこんな話だ。
とある村へやってきたダチェリー氏は、村に中傷の手紙が横行していることを知る。被害は拡がり続け、ついには自殺者まで出してしまうが、さらにその数日後、手紙の送り主を調査していた男性教師が死体で発見される。村に移り住んできた女性医師ヘレンが容疑者として目されるのだが……。
「中傷の手紙」テーマというのは英国ミステリの一ジャンルといえるぐらい度々使われるらしい。なぜに「中傷の手紙」が英国作家に人気があるかは知らぬが、その陰湿なイメージと相まって、今回の作風もいつもの明るい雰囲気とはうって変わり、やや暗めである。晩年の作品だけに、作者の体験や心情が反映されている感じも受ける。ただし、個人的にはもっと暗いのが好きなんだが。
本格ミステリとしては伏線なども丁寧で、最後の謎解きシーンはさすがに魅せる。ネタ的には驚くほどのものではないが、クリスピンが真面目に書いているのが感じられるし、(詳しく書くとネタバレになるが)ちょっとしたご愛敬があるのも本書の魅力だろう。
ただし、客観的にみて「どうしても読まなければ」という作品ではないだろう。オーソドックスな英国ミステリが好きな人、クリスピンのファンなら、といったところか。
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