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探偵小説三昧

日々,探偵小説を読みまくり、その感想を書き散らかすブログ


城昌幸『若さま侍捕物手帖 天を行く女』(春陽文庫)

 本日の読了本はご存じ「若さま侍捕物手帖」からの一冊。ってみんな知ってるのか?
 今年に入ってから読んだこのシリーズは三冊。すなわち『双色渦巻』『五月雨ごろし』『人化け狸』。これまではすべて表題作が短めの長編あるいは中編という作品集だったが、今回は初の長編なので、いっそう期待度が高い。とは言うものの長編だと気づいたのは読み始めてからなんだが。では粗筋から。

 将軍の寝どころに夜な夜な出没するというあやかし。白っぽい衣装を纏い、印を結ぶ老人の姿に場内は騒然とする。正体は生き霊、それとも忍びの者か? その実体はついと掴めず、南町奉行所付き与力の佐々島は、若さまの元へ相談に訪れた。さっそく調査にあたる若さま。しかしその前に立ちはだかるのは、なんと念術使いの一団だった。しかもその陰には、念術使いの二家による長きに渡る対立があったのである……。

 ううむ、このシリーズはあくまでミステリ風味を生かした捕物帖だと思っていた。序盤で見せられる不思議な術の数々は、そのうち若さまが解き明かしてくれると思っていた。そしたらこれがなんと、種明かしなど一切無しのリアル念術なのである。一応ヨガにその祖を求めてはいるが、リアルな時代劇ではなく、これは完全に伝奇小説ノリ。捕物帖というより山風の忍法帖というほうが近い。あ、でもこちらが知らないだけで、これらも含めて捕物帖だったりするのだろうか? このジャンルのスタンダードをあまり知らないのでいまひとつ釈然としないのだが。
 とにかく通常の人間技とは一線を画しているので、いつものように快刀乱麻とはいかないが、そこは百戦錬磨の若さまのこと。いつしか事件の中枢に潜り込んで、念術使い相手になかなかの活躍を見せるのはお約束どおり。ミステリ仕立ての短編とはまたひと味違った物語で、こういうのも悪くないっ、ていうか結局はムチャクチャ楽しめました。ううむ、奥が深い。

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sugata

Author:sugata
ミステリならなんでも好物。特に翻訳ミステリと国内外問わずクラシック全般。
四半世紀勤めていた書籍・WEB等の制作会社を辞め、2021年よりフリーランスの編集者&ライターとしてぼちぼち活動中。

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