- Date: Sat 07 04 2007
- Category: 海外作家 ロード(ジョン)
- Community: テーマ "推理小説・ミステリー" ジャンル "本・雑誌"
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ジョン・ロード『ハーレー街の死』(論創海外ミステリ)
本格探偵小説の黄金時代を代表するわりには、長らくいまいちの評価しかされていないジョン・ロード。その理由の大部分は「話が退屈」「トリックがぱっとしない」「キャラクターも地味」といったところだろう。
そんな作者にとっては不本意な評判が、この新刊で覆るのか。帯のキャッチ「最高傑作ついに翻訳なる!」はどこまで信じられるのか。
本日の読了本は、その『ハーレー街の死』だ。(今回ややネタバレあり)
タイトルどおり、事件はロンドンのハーレー街で起こった。変死体の主は診療所を営むモーズリー医師。死因はストリキニーネによる毒死。しかし、目撃者の証言や動機の問題などから、検死審問では事故死との評決が下る。
だがそれでも納得できないいくつかの謎。プリーストリー博士の家に集まったメンバーが各自の推理を披露するなか、博士は事故でもなく、自殺でもなく、他殺でもない第四の可能性を示唆する……。
ポイントはもちろん、上で挙げた「第四の可能性」とはどういうものか、ということであろう。本書の出来云々だけではなく、ミステリの本質にも関わるテーマである。普通に考えるとこれは期待大のはず。ただ、もしそんな驚くべきネタがあったのなら、とっくに本書はミステリ史上で燦然と輝いているはずなので、この辺は眉唾でかかるほうがよろしい。
案の定、「第四の可能性」という表現に関しては誇大広告であり、なるほど確かに面白い種明かしを提示してくれているものの、「第四の可能性」はやはり言い過ぎ。第一から第三の可能性のひとつに含めても全然OKのレベルではある。
なお、そのほかの要素については、他の作品同様のロードである。ストーリーや演出、謎解きなどは極めて地味。個人的にはそれほど気にならないものの、地の文まで使ってだらだらと推理されるとさすがに辛い。せめて会話に組み込むなどの演出はできないものか。しかも事件のトリックは一般人には思いつかないレベルのものだから、人によってはそれまでの推理すらむなしく感じるかもしれない(苦笑)。
結論。確かに今までに読んだロードの作品のなかでは最も楽しめたが(といっても『プレード街の殺人』『見えない凶器』『エレヴェーター殺人事件』の三作しかないのだが)、クラシックファン以外にはおすすめできるものではないだろう。これがロードの最高傑作であるとすれば、少し寂しいかも。
そんな作者にとっては不本意な評判が、この新刊で覆るのか。帯のキャッチ「最高傑作ついに翻訳なる!」はどこまで信じられるのか。
本日の読了本は、その『ハーレー街の死』だ。(今回ややネタバレあり)
タイトルどおり、事件はロンドンのハーレー街で起こった。変死体の主は診療所を営むモーズリー医師。死因はストリキニーネによる毒死。しかし、目撃者の証言や動機の問題などから、検死審問では事故死との評決が下る。
だがそれでも納得できないいくつかの謎。プリーストリー博士の家に集まったメンバーが各自の推理を披露するなか、博士は事故でもなく、自殺でもなく、他殺でもない第四の可能性を示唆する……。
ポイントはもちろん、上で挙げた「第四の可能性」とはどういうものか、ということであろう。本書の出来云々だけではなく、ミステリの本質にも関わるテーマである。普通に考えるとこれは期待大のはず。ただ、もしそんな驚くべきネタがあったのなら、とっくに本書はミステリ史上で燦然と輝いているはずなので、この辺は眉唾でかかるほうがよろしい。
案の定、「第四の可能性」という表現に関しては誇大広告であり、なるほど確かに面白い種明かしを提示してくれているものの、「第四の可能性」はやはり言い過ぎ。第一から第三の可能性のひとつに含めても全然OKのレベルではある。
なお、そのほかの要素については、他の作品同様のロードである。ストーリーや演出、謎解きなどは極めて地味。個人的にはそれほど気にならないものの、地の文まで使ってだらだらと推理されるとさすがに辛い。せめて会話に組み込むなどの演出はできないものか。しかも事件のトリックは一般人には思いつかないレベルのものだから、人によってはそれまでの推理すらむなしく感じるかもしれない(苦笑)。
結論。確かに今までに読んだロードの作品のなかでは最も楽しめたが(といっても『プレード街の殺人』『見えない凶器』『エレヴェーター殺人事件』の三作しかないのだが)、クラシックファン以外にはおすすめできるものではないだろう。これがロードの最高傑作であるとすれば、少し寂しいかも。
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情報ありがとうございます。一応、知ってはいたんですが、PCのモニター上であのボリュームを読むのがしんどくて、まったく手つかずでした。しかし、そこまでいわれると、これは気になりますね。
できれば本の形で読みたいのですが、紹介文ではROM叢書でも発売されないと書いてありますし、ううううううむ、悩みます……。