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樹下太郎『散歩する霊柩車』(光文社文庫)
樹下太郎『散歩する霊柩車』を読む。著者の初期短編を集めたもので、収録作品は以下のとおり。
「夜空に船が浮ぶとき」
「散歩する霊柩車」
「ねじれた吸殻」
「悪魔の掌の上で」
「泪ぐむ埴輪」
「孤独な脱走者」
「雪空に花火を」
「日付のない遺書」
強いていえば上から二作が本格、次の二作が悪女もののサスペンス、残りの四作が犯罪小説風。一見バラエティに富みつつも、共通するのはそのしみじみとした味わい。がつんとくるほどの衝撃や派手な仕掛けはないけれど、これもまたミステリのひとつの形であり、十分に読み応えのある好短編集であるといえるだろう。樹下太郎は基本的に上手い作家なのだ。
ただ、カットバックを多用する作品がいくつか見られるが、あれはこれらの短い作品にはかえって不向きな気がした。作品の構成上必要な場合もあるのだが、基本的に叙情的な作風なのだから、せかせかした切り替えは似つかわしくない。サスペンスを盛り上げるためだとは思うのだが……。
ちなみにマイフェイバリットは何といっても「散歩する霊柩車」。死んだ妻が不倫していた数人の男たちの下へ、霊柩車で回ってゆくという、著者には珍しいケレン味たっぷりの設定が素晴らしい。加えてケレンだけで終わらせない深さもあり、オチも見事です。
「夜空に船が浮ぶとき」
「散歩する霊柩車」
「ねじれた吸殻」
「悪魔の掌の上で」
「泪ぐむ埴輪」
「孤独な脱走者」
「雪空に花火を」
「日付のない遺書」
強いていえば上から二作が本格、次の二作が悪女もののサスペンス、残りの四作が犯罪小説風。一見バラエティに富みつつも、共通するのはそのしみじみとした味わい。がつんとくるほどの衝撃や派手な仕掛けはないけれど、これもまたミステリのひとつの形であり、十分に読み応えのある好短編集であるといえるだろう。樹下太郎は基本的に上手い作家なのだ。
ただ、カットバックを多用する作品がいくつか見られるが、あれはこれらの短い作品にはかえって不向きな気がした。作品の構成上必要な場合もあるのだが、基本的に叙情的な作風なのだから、せかせかした切り替えは似つかわしくない。サスペンスを盛り上げるためだとは思うのだが……。
ちなみにマイフェイバリットは何といっても「散歩する霊柩車」。死んだ妻が不倫していた数人の男たちの下へ、霊柩車で回ってゆくという、著者には珍しいケレン味たっぷりの設定が素晴らしい。加えてケレンだけで終わらせない深さもあり、オチも見事です。
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