- Date: Fri 05 04 2002
- Category: アンソロジー・合作 河出文庫その他
- Community: テーマ "推理小説・ミステリー" ジャンル "本・雑誌"
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仁木悦子、他『メルヘン・ミステリー傑作選』(河出文庫)
仕事で実に久しぶりに目黒へ行く。私にとってさっぱり縁のない街で、東京の住民のくせに最後に行ってからいつのまにか十数年も経ってしまっている。あまりの変貌ぶりに驚く……と書きたいところだが、以前の記憶すら残っていないので、目黒ってこんなところだっけ?という何ともつまらない感想しか浮かばない。所用を済ませ、帰りには事前にチェックしてあった古本屋をのぞくも特にめぼしいものはなし。まあ、こんなもんですな。
本日の読了本は仁木悦子らによる『メルヘン・ミステリー傑作選』。
メルヘン・童話というテーマで編まれたアンソロジーで、編者は新保博久&山前譲というコンビ。カバー等には編者の記述がないことから、まだお二人がブランドとして定着する以前の仕事ということなのでしょう。でも編者名はやっぱり入れないと失礼だし、本の形として間違っていると思うよ>当時の担当編集者。
何はともあれ、まずは収録作から。
仁木悦子「空色の魔女」
角田喜久雄「笛吹けば人が死ぬ」
石川喬司「メルヘン街道」
鮎川哲也「絵のない絵本」
赤川次郎「青ひげよ、我に帰れ」
小泉喜美子「遠い美しい声」
結城昌治「みにくいアヒル」
加田伶太郎「赤い靴」
最高とはいえないが、まずまずグレードは高くて楽しめる作品がそろう。河出文庫のアンソロジー・シリーズは一時期雨後の筍のように出ていた時期があって、似たようなテーマの『アリス・ミステリー傑作選』というものもある。しかし、あちらは基本的にタマ不足のせいもあって、別にアリスじゃなくてもいいじゃん、という作品も少なくなかった。こちらは範囲が広い分選択の幅も広がり、結果、質も高いように思う。
お気に入りは、有名すぎて気が引けるが、操り殺人をモチーフにした角田喜久雄の「笛吹けば人が死ぬ」。悪女というよりは、コンプレックスをバネにしすぎたがために心が壊れてしまった感じの女、絵奈。テーマもさることながら、彼女の特異なキャラクターが印象に残る。これで何度目かの再読になるが、いいものは何度読んでもいいです。
小泉喜美子「遠い美しい声」は瞬間芸というやつで、技ありの一本。巧い。
ひたすら主人公を突き放していく結城昌治の「みにくいアヒル」は、何とも言えない後味の悪さが逆に快感。
加田伶太郎「赤い靴」は本格としてしっかりしており悪くない作品だが、もっと恐怖感を煽ってくれた方がより楽しめたはずで、ちょっと惜しい。こんなところが本書のマイベストか。
なお解説はシンポ教授で、「死」と「メルヘン」が対談するという面白い趣向を凝らしている。遠そうで近い「死」と「メルヘン」の関係を説明しているが、ただ、数年前のベストセラーではないが、本来メルヘンや童話というのは残酷な要素を多分に含んでおり、その辺の話も加味してくれているとよかったのにと思う。童話は別にミステリーと絡まなくても、それ単独でも十分に怖いことがあるのだ。
本日の読了本は仁木悦子らによる『メルヘン・ミステリー傑作選』。
メルヘン・童話というテーマで編まれたアンソロジーで、編者は新保博久&山前譲というコンビ。カバー等には編者の記述がないことから、まだお二人がブランドとして定着する以前の仕事ということなのでしょう。でも編者名はやっぱり入れないと失礼だし、本の形として間違っていると思うよ>当時の担当編集者。
何はともあれ、まずは収録作から。
仁木悦子「空色の魔女」
角田喜久雄「笛吹けば人が死ぬ」
石川喬司「メルヘン街道」
鮎川哲也「絵のない絵本」
赤川次郎「青ひげよ、我に帰れ」
小泉喜美子「遠い美しい声」
結城昌治「みにくいアヒル」
加田伶太郎「赤い靴」
最高とはいえないが、まずまずグレードは高くて楽しめる作品がそろう。河出文庫のアンソロジー・シリーズは一時期雨後の筍のように出ていた時期があって、似たようなテーマの『アリス・ミステリー傑作選』というものもある。しかし、あちらは基本的にタマ不足のせいもあって、別にアリスじゃなくてもいいじゃん、という作品も少なくなかった。こちらは範囲が広い分選択の幅も広がり、結果、質も高いように思う。
お気に入りは、有名すぎて気が引けるが、操り殺人をモチーフにした角田喜久雄の「笛吹けば人が死ぬ」。悪女というよりは、コンプレックスをバネにしすぎたがために心が壊れてしまった感じの女、絵奈。テーマもさることながら、彼女の特異なキャラクターが印象に残る。これで何度目かの再読になるが、いいものは何度読んでもいいです。
小泉喜美子「遠い美しい声」は瞬間芸というやつで、技ありの一本。巧い。
ひたすら主人公を突き放していく結城昌治の「みにくいアヒル」は、何とも言えない後味の悪さが逆に快感。
加田伶太郎「赤い靴」は本格としてしっかりしており悪くない作品だが、もっと恐怖感を煽ってくれた方がより楽しめたはずで、ちょっと惜しい。こんなところが本書のマイベストか。
なお解説はシンポ教授で、「死」と「メルヘン」が対談するという面白い趣向を凝らしている。遠そうで近い「死」と「メルヘン」の関係を説明しているが、ただ、数年前のベストセラーではないが、本来メルヘンや童話というのは残酷な要素を多分に含んでおり、その辺の話も加味してくれているとよかったのにと思う。童話は別にミステリーと絡まなくても、それ単独でも十分に怖いことがあるのだ。
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