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エリス・ピーターズ『聖女の遺骨求む』(現代教養文庫)
エリス・ピーターズ『聖女の遺骨求む』を読む。ご存じ修道士カドフェル・シリーズの第一作だ。
時代は12世紀半ばのイングランド。カドフェルのいるシュールズベリ修道院では、修道院の守護聖人として奉るための聖人の遺骨探しに奔走していた。 白羽の矢が立ったのは、聖ウィニフレッドの遺骨を奉っているというウェールズの山村。そこでシュールズベリ修道院では、遺骨を貰い受けようとウェールズに遠征隊を派遣する。ところが修道院側に対して地元の村人たちが反発、やがて反対派のトップたる老人が殺される……。
中世ヨーロッパを舞台にした作品というと、いうまでもなくエーコの『薔薇の名前』という大傑作があげられるが、読む前はなんとなくカドフェルものは『薔薇〜』よりも穏やかでコージー色が強い先入観があった。
で、読後の感想だが、まさにそのイメージどおりの佳作であった。
まず歴史ミステリの楽しさである当時の人々の暮らし、何より修道士たちの生活が細やかに描かれているのがよい。ストーリーも世界観を活かしており、当時のしきたりや風習を捜査活動にもうまく活用していると思う。ときには奇跡なども起こったりするが、それすら巧みに物語に組み込んでいるのがすごい。
登場キャラクターも魅力的だ。特にカドフェルについては修道士一直線みたいな超穏和で知的なタイプを予想していただけに(強引だがブラウン神父みたいな感じ?)、ちょっと意外。あんなに世故に長けた行動的な人物だとは思わなかった。
欠点を言えば、謎の弱さか。基本的には本格としてのケレン味みたいのものは乏しく、謎もすぐ割れる。しかし前述のように捜査の過程は納得いくもので、しっかりしたものだし、この本の魅力は謎解きより人間ドラマの部分にあるといってよいだろうから、そこまで望むのは贅沢というものだろう。十分満足できる一冊で、若さま侍同様しばらくはつきあってみたいシリーズだ。
時代は12世紀半ばのイングランド。カドフェルのいるシュールズベリ修道院では、修道院の守護聖人として奉るための聖人の遺骨探しに奔走していた。 白羽の矢が立ったのは、聖ウィニフレッドの遺骨を奉っているというウェールズの山村。そこでシュールズベリ修道院では、遺骨を貰い受けようとウェールズに遠征隊を派遣する。ところが修道院側に対して地元の村人たちが反発、やがて反対派のトップたる老人が殺される……。
中世ヨーロッパを舞台にした作品というと、いうまでもなくエーコの『薔薇の名前』という大傑作があげられるが、読む前はなんとなくカドフェルものは『薔薇〜』よりも穏やかでコージー色が強い先入観があった。
で、読後の感想だが、まさにそのイメージどおりの佳作であった。
まず歴史ミステリの楽しさである当時の人々の暮らし、何より修道士たちの生活が細やかに描かれているのがよい。ストーリーも世界観を活かしており、当時のしきたりや風習を捜査活動にもうまく活用していると思う。ときには奇跡なども起こったりするが、それすら巧みに物語に組み込んでいるのがすごい。
登場キャラクターも魅力的だ。特にカドフェルについては修道士一直線みたいな超穏和で知的なタイプを予想していただけに(強引だがブラウン神父みたいな感じ?)、ちょっと意外。あんなに世故に長けた行動的な人物だとは思わなかった。
欠点を言えば、謎の弱さか。基本的には本格としてのケレン味みたいのものは乏しく、謎もすぐ割れる。しかし前述のように捜査の過程は納得いくもので、しっかりしたものだし、この本の魅力は謎解きより人間ドラマの部分にあるといってよいだろうから、そこまで望むのは贅沢というものだろう。十分満足できる一冊で、若さま侍同様しばらくはつきあってみたいシリーズだ。
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